ミサコ × カナエのよりみち
『山月記』
きょうの寄り道
美少年を見つけたのに、気になるのはその友だちかつて「美少年」だった李徴に反応したミサコが、友人・袁傪の言動に目を奪われる。声で友と気づく再会と、詩への率直な評価から、見られる怖さと友情をたどる紹介対話。物語の中盤に触れますが、最後の場面は伏せています。📖 本文の手がかり
美少年だった李徴と、失われた面影
「下吏となつて長く膝を俗惡な大官の前に屈するよりは、詩家としての名を死後百年に遺さうとしたのである。しかし、文名は容易に揚らず、生活は日を逐うて苦しくなる。李徴は漸く焦躁に驅られて來た。この頃から其の容貌も峭刻となり、肉落ち骨秀で、眼光のみ徒らに烱々として、曾て進士に登第した頃の豐頬の美少年の俤は、何處に求めやうもない。」
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声で気づく「我が友、李徴子」
「虎は、あはや袁※⟦青空文庫注記:「にんべん+參」、第4水準2-1-79⟧に躍りかかるかと見えたが、忽ち身を飜して、元の叢に隱れた。叢の中から人間の聲で「あぶない所だつた」と繰返し呟くのが聞えた。其の聲に袁※⟦青空文庫注記:「にんべん+參」、第4水準2-1-79⟧は聞き憶えがあつた。驚懼の中にも、彼は咄嗟に思ひあたつて、叫んだ。「其の聲は、我が友、李徴子ではないか?」袁※⟦青空文庫注記:「にんべん+參」、第4水準2-1-79⟧は李徴と同年に進士の第に登り、友人の少かつた李徴にとつては、最も親しい友であつた。」
恐怖を忘れ、友のそばへ
「袁※⟦青空文庫注記:「にんべん+參」、第4水準2-1-79⟧は恐怖を忘れ、馬から下りて叢に近づき、懷かしげに久濶を叙した。」
姿は見せられない。それでも話したい
「李徴の聲が答へて言ふ。自分は今や異類の身となつてゐる。どうして、おめ/\と故人の前にあさましい姿をさらせようか。且つ又、自分が姿を現せば、必ず君に畏怖嫌厭の情を起させるに決つてゐるからだ。しかし、今、圖らずも故人に遇ふことを得て、愧赧(きたん)の念をも忘れる程に懷かしい。どうか、ほんの暫くでいいから、我が醜惡な今の外形を厭はず、曾て君の友李徴であつた此の自分と話を交して呉れないだらうか。」
虎になった理由を聞く、その前の会話
「彼は部下に命じて行列の進行を停め、自分は叢の傍に立つて、見えざる聲と對談した。都の噂、舊友の消息、袁※⟦青空文庫注記:「にんべん+參」、第4水準2-1-79⟧が現在の地位、それに對する李徴の祝辭。青年時代に親しかつた者同志の、あの隔てのない語調で、それ等が語られた後、袁※⟦青空文庫注記:「にんべん+參」、第4水準2-1-79⟧は、李徴がどうして今の身となるに至つたかを訊ねた。」
「人食い虎」の忠告を聞かずに出発
「次の朝未だ暗い中に出發しようとした所、驛吏が言ふことに、これから先の道に人喰虎が出る故、旅人は白晝でなければ、通れない。今はまだ朝が早いから、今少し待たれたが宜しいでせうと。袁※⟦青空文庫注記:「にんべん+參」、第4水準2-1-79⟧は、しかし、供廻りの多勢なのを恃み、驛吏の言葉を斥けて、出發した。」
詩に感嘆しつつ、心に残る物足りなさ
「袁※⟦青空文庫注記:「にんべん+參」、第4水準2-1-79⟧は部下に命じ、筆を執つて叢中の聲に隨つて書きとらせた。李徴の聲は叢の中から朗々と響いた。長短凡そ三十篇、格調高雅、意趣卓逸、一讀して作者の才の非凡を思はせるものばかりである。しかし、袁※⟦青空文庫注記:「にんべん+參」、第4水準2-1-79⟧は感嘆しながらも漠然と次の樣に感じてゐた。成程、作者の素質が第一流に屬するものであることは疑ひない。しかし、この儘では、第一流の作品となるのには、何處か(非常に微妙な點に於て)缺ける所があるのではないか、と。」
学び合うことを避けた「臆病な自尊心」
「己(をれ)は詩によつて名を成さうと思ひながら、進んで師に就いたり、求めて詩友と交つて切磋琢磨に努めたりすることをしなかつた。かといつて、又、己は俗物の間に伍することも潔しとしなかつた。共に、我が臆病な自尊心と、尊大な羞恥心との所爲である。己(をのれ)の珠に非ざることを惧れるが故に、敢て刻苦して磨かうともせず、又、己(おのれ)の珠なるべきを半ば信ずるが故に、碌々として瓦に伍することも出來なかつた。」
自分の詩を、後の世に残してほしい
「他でもない。自分は元來詩人として名を成す積りでゐた。しかも、業未だ成らざるに、この運命に立至つた。曾て作る所の詩數百篇、固より、まだ世に行はれてをらぬ。遺稿の所在も最早判らなくなつてゐよう。所で、その中、今も尚記誦せるものが數十ある。之を我が爲に傳録して戴き度いのだ。何も、之に仍つて一人前の詩人面(づら)をしたいのではない。作の巧拙は知らず、とにかく、産を破り心を狂はせて迄自分が生涯それに執著した所のものを、一部なりとも後代に傳へないでは、死んでも死に切れないのだ。」
ミサコ × カナエの話
2人の感じ方です。本文に戻って、たしかめながら読んでみてね。
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